2011 Fiscal Year Annual Research Report
近・現代文学における知的障害者表象に関する基礎的研究
Project/Area Number |
22820045
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河内 重雄 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 専門研究員 (10581530)
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Keywords | 知的障害 |
Research Abstract |
本研究の全体的な目的は、日本近現代文学における知的障害者表象を通史的に研究し、知的障害者観・人間観を多角的に明らかにすること。そのための知的障害者を表象する作品のデータベース構築が本研究の目的である。 本年度も引き続き未調査の文芸雑誌の調査を行った。日本近代文学館等が大部分を所蔵する『新小説』や『文芸倶楽部』、九州大学所蔵の『新潮』や『早稲田文学』の調査を行い、新たに森鴎外や幸田露伴の作品を多数リストアップできた他、島本理生や鹿島田真希、遠藤徹等、メジャーとは言い難い作家の作品も数多く加えることができた。また、本年度は知的障害言説の形成に関わりのある医学・教育関係の著書のリストアップも同時に行った。京都市社会課『京都市に於ける特殊児童調』(大正十一年七月)、中村古峡『変態性格者雑考全』(昭和三年六月)、教育局視学課『補助学級設備に関する調査』(昭和三年八月)、東京市教育局視学課『補助学級ニ関スル調査』(昭和十年三月)他、数多くの教育等の著作をリストアップすることができた。 本年度研究の意義・重要性としては以下の二点が挙げられる。一つは、幸田露伴や森鴎外、童話作家の小川未明など、これまで知的障害表象に縁がないと思われていた作家の作品の用例を多数集めることができたため、知的障害の観点から、これらの作家の作品を研究する必要があることを、明らかにすることができた点。もう一つは、戦前の「特殊学級」における教育の実態や、教育にあたっていた教師達が参考にしていた図書がどういったものであるか、そして医学等における知的障害者観がどのようなものであったか等が、医学・教育関係の著書のリストアップにより、明らかになった点である。知的障害者表象の体系的研究のための準備を整えることができたと考える。
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