2010 Fiscal Year Annual Research Report
藤原定家の書写工房における古典籍の書写に関する研究
Project/Area Number |
22820050
|
Research Institution | Onomichi University |
Principal Investigator |
岸本 理恵 尾道大学, 芸術文化学部, 講師 (10583221)
|
Keywords | 書誌学・文献学 / 藤原定家 / 古典籍 / 書写 |
Research Abstract |
本年度は、定家監督書写本または定家等筆とされる写本に見える定家以外の人物による筆跡の分類について実見調査を実施するとともに、対象とする資料の範囲を私家集に限らず周辺のものにまで拡大して、これまで筆跡についての言及がなされているものに対しでも1丁ずつ再確認することとした。こうする中で、従来は同じ人物による書写と見なされていた資料についても別筆であることが確認できるものがあった。また、全丁が定家以外の人物の手による写本の中には、定家と周辺の人物によって書写された本と同様に、複数の人物の筆跡が確認できるもの、そうした人物が分担を複数回入れ替わって書写しているものがあることが判明した。これらのうち一部をまとめたものが、口頭発表「藤原定家の書写工房における私家集書写活動-『大斎院前の御集』を手がかりとして-」(2010年12月)である。 また、「伝西行筆和泉式部続集の原形」(『尾道大学芸術文化学部紀要』10号)では、現在は零本のかたちで伝わるいわゆる「伝西行筆和泉式部続集切」の錯簡や分断・散逸等の起こる以前の形を復原したものである。この集は定家の書写工房において書写されたことが既に明らかになっているものであるが、現在は分割され錯簡や乱丁を起こした上に「高遠大弐集」「大弐三位集」の外題が付され、一部は古筆切となってあるいは散逸して全体像は明らかでなかった。これについて、現存する箇所の錯乱状態を分析し、それがいかに引き起こされたものであるのかについて考察するとともに、これまでの調査により明らかになった、定家の書写工房において制作された他の私家集の形態の特徴を当てはめることで解明することができたものである。
|
Research Products
(2 results)