2011 Fiscal Year Annual Research Report
明治期の文人ネットワークにおけるジャンル横断的な文化交流の総合的研究
Project/Area Number |
22820059
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
出口 智之 東海大学, 文学部, 講師 (10580821)
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Keywords | 根岸党 / 幸田露伴 / 高橋太華 / 森鴎外 / 岡倉天心 / 文人ネットワーク / 日記 / 明治 |
Research Abstract |
本年度は、『幸田露伴と根岸党の文人たち-もうひとつの明治』および「高橋太華『雅俗日記』(明治二十五年)翻印と注釈」(一)(二)を発表し、本研究課題の仕上げと一般への成果公開を行うとともに、新たな課題の発見によって次なる研究課題への発展的接続を試みた。 まず、幸田露伴らが明治二十年代に結成していた文人サークル、根岸党について、成立から解体までの活動の詳細を平成22年度中にほぼ解明し、その文化史的意義を明らかにしたのを受け、その内容を上記図書にまとめた。その内容は、従来ほぼ不明とされてきた根岸党の成立・解消の時期をそれぞれ明治十年代後半・明治二十七年ころと特定したうえで、構成メンバーや各人の関わりの濃淡、党の活動を描いた作品などを詳細に紹介したものである。そのうえで、作家・画家・新聞記者・思想家・裁判官・官僚など様々な人士が集まり、気ままな遊びを繰広げていた根岸党について、従来からの逃避的享楽の場とする捉え方に疑義を呈し、これはむしろ、真摯な言論や芸術の場などで活躍する人物も他愛ない遊びに本気で興じていた、明治という時代の多様性のあらわれと捉えるべきであるとした。これにより、江戸期の遊びの精神と感性を保ったまま新時代を迎えた人々が、新しい文物をどのように捉え、受入れたのかという、近世と近代の文化的接続の状況が明らかになり、従来は分断して捉えられることの多かった両時代の、緩やかな交代期における文化の実相を解明することができた。 また、平成22年度中に所在を確認していた、根岸党の中心的メンバーの一人、高橋太華の日記について翻刻と注釈を行った。幸田露伴・岡倉天心・森鴎外ほか多数の文化人との交遊が記録されたこの日記は、明治中期の文人たちのネットワークの実態を明らかにするうえで貴重な資料であるため、単に翻刻を公開するのではなく、詳細な注釈を附して彼らの交友の様相を明らかにしようと試みている。この作業は現在も継続中であり、平成24年度中に公開が完了する予定である。
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Research Products
(3 results)