2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島東半部における最終氷期極相期の適応戦略・資源利用技術に関する研究
Project/Area Number |
22820066
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
岩瀬 彬 明治大学, 研究・知財戦略機構, 共同研究員 (70589829)
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Keywords | 先史考古学 / 旧石器考古学 / 石器使用痕分析 |
Research Abstract |
本研究は,最終氷期極相期における日本列島東半部の環境に適応した人類の行動戦略や資源利用技術の特徴を浮彫することを目的に,石器使用痕分析および古環境情報の比較を行う.平成22年度では,1.石器使用痕分析,2.古環境情報の整理,3。石器使用痕分析と古環境情報の成果に関する予備的な比較検討を実施した. 1については,(1)最終氷期極相期の本州東北部に展開した杉久保石器群,(2)最終氷期極相期の本州中央部に展開した有樋尖頭器石器群,(3)完新世初頭の北海道に展開した石刃鏃石器群,を対象に使用痕分析を実施した.このうち(1)と(3)については研究成果を公表している.また(1)の分析に並行して,新潟県小千谷市真人原遺跡D地点の発掘を研究協力者(首都大学東京:山岡拓也氏)とともに実施し,遺跡の時期を特定する上で指標となる資料を得ることができた. 2については,後期更新世後半における気候,植物相,動物相関する既存のデータの集成・整理を行った.特に後期更新世後半の大型哺乳動物の絶滅年代とその要因について研究成果を公表した. 3については,最終氷期極相期の本州東北部に展開した杉久保石器群を対象に,石器使用痕分析の成果と古環境情報(特に植生)の予備的な比較を行った.分析の結果,動物性の硬質な素材(角や骨)の加工を示す痕跡はほとんど認められなかった.当時は寒冷だが比較的森林が残る環境にあったと推定される.動物性の硬質な素材の加工を示す痕跡の不在は,こうした環境(木材資源の比較的豊富な環境)へ適応した技術を反映していると考える.この成果は1の(1)とともに公表している.
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