2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22820068
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
上原 作和 明星大学, 人文学部, 教授 (00581050)
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Keywords | 源氏物語 / 大島本 / 佐渡 / 毛利元徳 / 紫式部日記 / 全注釈 / 現代語訳 / 書籍伝来史 |
Research Abstract |
平成22年度の研究成果 1底本の選定、および校訂基準の設定 『源氏物語全注釈』の底本とすべき「摂関家伝領本系」本文の来歴の検討に時間を要した。とりわけ、最重要伝本である大島本源氏物語の来歴の究明に焦点を絞り、昭和5、6年の交、佐渡の某家から突如出現し、大島雅太郎の青谿書屋に収められたとのみ伝えられてきた大島本の佐渡伝来の経緯を明らかにした。その概要は、この伝本が吉見正頼によって現在の形態となって以後もなお、吉見家にあって、吉見家が大野毛利家を称した後、毛利宗家に献上され、江戸時代を通じて萩藩にあった。明治20年代に入って、毛利家から家財整理を依頼された勝海舟の命で、最後の佐渡奉行・鈴木重嶺の和歌の門弟であった、佐渡貝塚の田中家に譲渡されて約40年保管され、池田亀鑑の斡旋で大島雅太郎の掌中となったというものである。この成果を学会に発表することで、55年に渉る大島本未解決の諸問題に関する研究を大いに進捗させたことになろう。 2註釈の草稿作成と現代語訳着手 申請者は『人物で読む源氏物語』で、青表紙本系の註釈を全体の2/3ほど終えている。これらのデータの整備を研究協力者の助力を得て、まずこれを整理し、未着手の註釈箇所に関する補筆を行った。 いっぽう、本年度は、その前提整備として、作者の日記『紫式部日記』の全注釈に取り組み、廣田収・同志社大学教授共編の『紫式部と和歌の世界一冊で読む紫式部家集訳注付』を上梓した。平成23年度は『源氏物語』54帖の第一次全注釈を完成させることになる。従来にない、斬新な新見解を盛り込んだ注釈となるであろう。
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