2010 Fiscal Year Annual Research Report
密教経典の変容から窺える東アジア仏教文化形成の一様相―穢積金剛類経典を中心として
Project/Area Number |
22820074
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
池 麗梅 鶴見大学, 仏教文化研究所, 准教授 (50449360)
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Keywords | 仏教学 / 東アジア仏教 / 仏教文化 / 密教 / 疑偽経本 / 中国道教 |
Research Abstract |
本研究は、『霊要門』と『禁百変』の日本古写経本、刊本テキスト、敦煌写本との比較研究を基本的な方法とする。研究期間中は、日本古写経本数種とフランス国立図書館所蔵敦煌本に関しては原本調査を行い、調書の作成や、所蔵機関の許可に基づく撮影を実施し、それら古写本と刊行流布本のテキスト内容を比較検討することにより『霊要門』と『禁百変』が現行本の形に定着するためのプロセスをいくつかの段階に分け、それぞれの年代を概ね特定し、それぞれの段階で生じた変容の背景、要因を分析することを試みる。このような調査研究方法によって、仏典が東アジア世界固有の思想文化という基盤の上で、各地域への浸透に伴っていかに民衆救済の需要に応じ、葛藤と妥協を経験しながら変容を遂げてきたかのかについて分析し、東アジア仏教文化形成の一様相に関する確実な新知見を加えようとするのが本研究の最終目的である。 この目標を達成するため、平成22年度ではまず国内外における原本調査の準備を進め、携帯用ノート型パソコンやデジタルカメラ等の設備備品、消耗品等を購入するなど研究環境を整えた。次に、寺院・文庫・図書館の目録、博物館の図書等を網羅的に調べ、現存古写本の所在を確認し、聖教本を含む『霊要門』と『禁百変』現存古写本のリストを作成し、調査計画に基づき原本調査を徐々に展開してきた。また、国際仏教学大学院大学・私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「東アジア仏教写本研究拠点の形成」が提供する「日本古写経データベース」を利用したほか、当プロジェクトの先生方のご協力により、日本と韓国の寺院調査、または中国国家図書館と北京大学図書館の敦煌写本の調査は効率的に進めることができた。さらに、写本の画像を入手次第、翻刻、校訂を行い、調査研究で得られた成果は、『鶴見大学仏教文化研究所紀要』(第16号、2011年3月)に掲載したほか、海外の学会にエントリーし23年度内に国内外の学会や学会誌で公表する予定である。
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Research Products
(1 results)