2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22820083
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
西村 慎太郎 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (90383546)
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Keywords | 日本近世史 / 天皇 / 公家 / 家職 / 庖丁道 / 有職故実 / 入木道 / 文芸 |
Research Abstract |
近世の公家文化について、その家職がどのように民間社会に流布・展開を明らかにすることを目的とした。昨年度同様に有職故実全般・入木道に加えて、新たに公家家職のひとつである四条流庖丁道に関する研究を行なった。以下、内容を二点に分けて説明する。 第一に近世公家家職の全体的な展開過程を明らかにした。これまで流布という視角で研究を進め、高橋宗孝という地下官人であり有職故実家の日記を分析してきたが、そもそも公家の家職も中世・近世の中で様々な展開や創生されていることが明らかになった。そこで、近世公家家職そのものを理解しなくてはなぜ民間社会に流布し得たのかの分析が不可能であると思い、家職を総合的に研究した。その成果として2011年5月26日にシンポジウム「近世の公家文書と学芸」にて「近世公家家職研究の展望と課題」を報告した。また、門跡を取り巻く文化動向として、「近世非蔵人の門跡肝煎-霊元院政期の梶井門跡を事例に-」(『日本歴史』756、2011年)を執筆した。 第二に公家家職の中でもこれまで検討してきた入木道と異なり、近世になって再発見されて幕末に飛躍的に民間社会と結合していく四条流庖丁道の具体相を研究した(四条流庖丁道に関する史料は宮内庁書陵部蔵)。四条流庖丁道は公家の四条家に伝来してきたが、もともとは家職というより、中世段階の当主が数名ほど庖丁の技術を持っていたに過ぎなかった。それが近世後期に秘伝と由緒を作り、幕末には大坂・兵庫・京都などに多くの門人を獲得するに至った。この研究の成果として、『宮中のシェフ、鶴をさばく』(吉川弘文館歴史文化ライブラリー、2012年)を執筆した。
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