2010 Fiscal Year Annual Research Report
裁判所による規範形成に関する実証研究-中国的司法積極主義のメカニズムの解明
Project/Area Number |
22830001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
徐 行 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教 (30580005)
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Keywords | 中国法 / 比較法 / 能動司法 |
Research Abstract |
現代中国における裁判所による規範形成の現状(特に判例による法形成の現状)とその背後にある法的・政治的要因を解明し、中国的な特色を有する「司法積極主義」たらしめるメカニズムを明らかにすることは本研究の目的である。そこで、まず従来の司法による法形成のルートである「司法解釈」の現状を解明する必要がある。また、裁判例(案例)の公表の状況、及びその運用の実状も明らかにしなければならない。社会体制と法第11号に発表した「現代中国における司法解釈と案例」はまさにそれを念頭に作成した論文である。裁判官が制定法に対して解釈を行うことは許されないと解されている中国において、最高人民法院による通達文書である「司法解釈」が如何なる歴史を経験し、今は如何に「法解釈」の名を借りて事実上の立法を行っていて、法の不足を補うと同時に、法適用の統一をも図っているのかを説明した。また、その現状を踏まえて、それに如何なる問題点があるのかを指摘し、中国法における「司法解釈」によるルール形成の特徴を明らかにした。そして、案例をめぐる現状と改革の動きを説明し、従来ルール形成に役立たないと思われてきた案例が地方裁判所による実験的な試みを経て、少しずつ法形成に貢献できるようになってきた状況を検討した。特に、最高人民法院が打ち出した「案例指導制度」がどこまで進展していて、これから如何なる発展を遂げる可能性を秘めているかを検討することで、不完全でありながら、中国における裁判所による規範形成の現状の解明を実現したと考えている。そのほか、北海道大学の体制転換と法研究会における書評の報告は、日本人学者が考えている中国の司法による法形成の現状について、コメントを行い、本の執筆者との意見交換を実現した。将来の論文の執筆にとても有意義な意見交換であったと思われる。
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Research Products
(2 results)