2011 Fiscal Year Annual Research Report
裁判所による規範形成に関する実証研究―中国的司法積極主義のメカニズムの解明
Project/Area Number |
22830001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
徐 行 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教 (30580005)
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Keywords | 中国法 / 比較法 / 司法制度 |
Research Abstract |
本研究の課題は現代中国における[案例](裁判例)による規範形成の現状、および裁判における先例の運用実態を解明し、その背後にある法的・政治的要因を解明することである。そして、本年度の研究は最高法院が2010年の年末に創設し、2011年中に運用を開始した「案例指導制度」の制度設計や実際の運用状況の解明に重点を置いたのである。一般的に公開されている資料の収集のほか、制度の形成と「指導性案例」の選択に直接参加した最高法院の裁判官を対象にヒアリングを行い、各地の地方法院の裁判官を対象とするインタビュー調査も行った。「案例指導制度」の確立は裁判によるルール形成の規範化を図るための重要な措置であり、司法改革の一環として位置づけられている。その現状を明らかにすることで、司法改革の背後に隠れている「統治の正統性の調達」という共産党の意図を見出せるのではないかと思われる。裁判による紛争処理の中で、一般市民による「民意」を汲み上げ、統治階級による「上意」との調和を図り、最終的に「民意」を反映したルールを確立するというやり方は、一種の「直接参加型」の「民主」と評価されることがある。つまり、司法を統治の道具として使ってきた共産党が、市民による司法への参加を推進することで正統性を調達し、その統治を維持しようとしていると考えられる。本研究の対象である「案例指導制度」の確立もその一環であろう。その意味においては、本年度の研究は中国における共産党統治のあり方や司法改革の行方、ひいては民主化の可能性にも分析の材料と手掛りを提供できると思われる。なお、調査研究のほか、2011年6月に、本研究の成果の一部を学会報告の形で公表した。また、研究の成果を取り入れた論文の連載も開始しており、今年度中に完了する予定である。
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Research Products
(4 results)