2010 Fiscal Year Annual Research Report
精神疾患者の雇用における権利保障システムに関する研究
Project/Area Number |
22830002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
所 浩代 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教 (40580006)
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Keywords | 社会法学 / 社会福祉関係 |
Research Abstract |
本研究の目的は、精神疾患・精神障害のある労働者の権利を実質的に保障するための救済システムを、追究することにある。障害者の権利のなかでも、本研究は、雇用機会の平等保障、精神疾患による就労上の制約に対して一定の配慮を受ける権利(あるいは、使用者の配慮義務)、障害に基づくハラスメントを受けない権利などに着目し、これらの諸権利を実質的に保障するための手続システムのあり方を明らかにすることをめざしている。 上記課題を明らかにするために、平成22年度においては、まず、アメリカの障害者雇用差別禁止法(ADA)の規制構造と司法レベル、行政レベルの救済システムのあり方を、文献調査を用いて確認した。さらに、現地研究者とのインタビューを実施し、日本との比較について議論を行った。 これらの活動を経て、次のことが明らかになっている。(1)アメリカの障害者雇用差別禁止法は、障害に基づく不利益取扱いの禁止、障害に対する合理的配慮の提供を義務づけている。しかし、司法救済を通じて、障害者の権利保障が実現される割合は少ない。(2)その一方で、障害者への配慮を義務づけるADAは、当事者間における自発的な問題解決のなかにおいて、「使用者の行為規範」として重要な意義を有している。アメリカでは、行政機関(EEOC)などが積極的にADRプログラムを提供しているが、ここでは専門スタッフが、法の要請と事例に応じた具体的な解決方法を両者にアドバイスする。これにより、協調的な雰囲気のなかで障害者の意向に沿った解決がなされることが多いとされている。(3)しかし、精神疾患のある労働者、知的障害のある労働者は、自らの意思を適切なタイミングで主張することが難しく、司法救済手続、行政機関などが提供するADRなどを、効果的に利用して自らの権利に対する侵害を是正することが難しい。 次年度の調査においては、(3)の京をさらに検討し、調査報告をまとめる予定である
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