2010 Fiscal Year Annual Research Report
理科教育における自己調整学習の成立過程に関する研究
Project/Area Number |
22830005
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
和田 一郎 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70584217)
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Keywords | 自己調整学習 / 科学概念 / 表象機能 / メタ認知 |
Research Abstract |
本研究では、子どもの科学概念の構築過程を表象の観点から考察することを通じて、今後の理科教育において強力に要請される「自己調整学習の成立」に向けた機能的な教授ストラティジーを開発することを主な目的とした。平成22年度は、子どもの科学概念構築と表象との関連性についての知見を深化させ、その上で、これまでの研究成果を踏まえ、Zimmerman,J.らの自己調整学習に関わる諸理論を援用して理科教育における自己調整学習の成立要因の抽出および教授論的展開の視点の導出を志向した。 結果として、まず子どもの科学概念の構築過程に関しては、活動・映像・記号といった複数の形式、レベルの表象が複合的に機能していることを明らかにした。この科学概念構築と表象との関連性については、「表象ネットワークモデル」として、その様態をモデル化することに成功した。また、子どもは科学概念構築過程において、こうした複数の表象を的確に操作することが要求されるが、これまでその内実は不明瞭であった。この点について本研究では、Kozma,R.らの理論を援用して表象の操作上の因子として5つのレベルを同定し、具体的な理科授業を通じてその様態について分析を施した。さらに、これらの研究結果を踏まえ、子どもが自律的に表象を操作し、科学概念を構築していく学習を成立させるための因子についてZimmerman,J.自己調整理論を基盤に抽出し、具体的な教授論的展開の視点を導出した。自己調整学習の成立に向けては、子どもはメタ認知機能をハブ機能として、様々な表象を時宜に適して操作していくことによって自律的な科学概念構築が具現化される可能性があることが明らかとなった。
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