2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22830009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白井 正和 東北大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (10582471)
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Keywords | 会社法 / 企業買収 / 友好的買収 / 差止制度 / 組織再編 / 法と経済学 / コーポレート・ガバナンス |
Research Abstract |
本研究は、会社法において差止制度が果たすべき機能の再検討を目的とする。特に、企業買収の場面において差止制度を活用することで、株主・経営者間のエージェンシー問題の改善を図るための具体的な提案を行うことを目的とする。従来、差止制度は、問題となる行為が現実に行われる前にその行為を禁止するという特徴を有するため、裁判所が差止めを認めることには謙抑的であるべきといった考え方が支配的であった。これに対し、企業買収の場面では、買収対象会社の取締役の善管注意義務・忠実義務違反を取締役の行為に対する差止めの根拠とすることで、問題となっている企業買収取引そのものを禁止することなく、経営者の自己利益の追求行為をより柔軟に抑制することが可能になる。すなわち、買収対象会社の取締役に対して、買収者との買収条件の再交渉や他の潜在的な買収者の調査・検討を促すことが可能になるのである。今年度は、企業買収の場面における株主・経営者間の利害対立状況の整理・分析や、かかる利害対立状況を改善するためのわが国の法制度上の対処の現状分析を行い、こうした分析を進めるうえで必要となる文献の収集・分析を行った。そのうえで、わが国の企業買収の場面において取締役の行為の差止めという手段を用いることの妥当性についても検討し、そのために必要となる文献の収集・分析を行った。そして、以上の文献・資料等に基づき、わが国の企業買収取引の抱えている問題点や、当該問題点を解決するうえで取締役の行為に対する差止制度が果たすべき役割について検討を行った。検討の成果については、東北大学商法研究会で報告するとともに、本研究の問題意識を端的に紹介した論文を法学協会雑誌に3回にわたり掲載した。このように、早い段階からその問題意識を外部の評価・批判にさらすことで、本研究は、様々な角度から、わが国の企業買収制度が抱える問題を分析するための視点を確保できた。
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