2011 Fiscal Year Annual Research Report
国際関係論における歴史分析の理論化に向けて一方法論の開拓
Project/Area Number |
22830022
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保城 広至 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (00401266)
|
Keywords | 国際関係論 / 外交史 / 政治学方法論 / 科学哲学 |
Research Abstract |
本年度は、成果の発表に向けて前年度から行ってきた分析を継続して進めた。具体的には、歴史学や科学哲学分野における(教科書レベルを越えた)専門的な論文や書籍を渉猟し、また、いくつかのセミナーやワークショップ等で発表して多くの専門家から広く意見を聴取することによって、次の諸点の理解を深めることができた。それらは、(1)本研究の課題であった「説明概念」-因果説明と記述説明-を統合する方法を、ある程度の説得性を持って提示できた。(2)「中範囲の理論」構築のためには事例の全枚挙が必要との論理を、視覚的に表現することができた。(3)理論負荷性と帰納的飛躍という問題点を抱える帰納法の陥穽とともに、社会科学における演繹法の問題点-前提が真理ということと、結論が真理という二つのことを、演繹的に確かめる条件が欠落していること-を挙げることによって、アブダクションの方法が社会科学方法論に最適であることを論証することができた。 ただし、依然として次の2つの問題点が残った。(1)「中範囲の理論」構築のために、どこで範囲を絞るのかといった問題に対して、それほど説得的な解を提示できなかった。(2)社会現象を抽象化するための包括的なリストを作成する必要性。この2つは当初計画ではあまり認識していなかった問題点であり、その解決が今後の課題として挙げられる。それを終了させることができれば、一つのモノグラフとしてまとめて発表することが可能であると考える。
|