2010 Fiscal Year Annual Research Report
パネルデータを用いた学力の形成・発揮メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
22830025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 理 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (10583833)
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Keywords | 学力 / パネル調査 / 教育社会学 |
Research Abstract |
本研究は、(1)文献研究、(2)インタビュー調査、(3)中学・高校生アンケート、(4)卒業生アンケートにわかれる。(1)文献研究については、本年度に発表された最新の調査研究を中心にレビューを追加し、アンケートに修正を加える材料とした。(2)インタビュー調査については、昨年度までのアンケート調査に追加・修正を加えるために、高校生13人、教員13人、大学生5人を対象とするインタビュー調査を行った。(3)中学・高校生アンケートについては、(1)(2)の文献研究、インタビュー調査をふまえたうえで質問紙を改訂し、その質問紙を用いて質問紙調査を行った。(4)卒業生アンケートについては、(1)(2)の文献研究、インタビュー調査をふまえたうえでアンケートを行った。以上から明らかになったのは、学力の形成・発揮について、中学と高校、高校と大学の間に若干の断絶があることである。第一に、中学3年間の学力形成と高1の学力形成がどのように関連しているかを検証できた。中3と高1の学力の相関は、中2と中3や高1と高2の学力の相関よりも低い。これは、高校入学をきっかけとして学力形成の順位にシャッフルが生じていることを指し示している。第二に、高校3年間で身につけた学力が、大学3年のゼミでどのように活かされるのかを検証できた。高校3年間の偏差値とゼミへの積極度は関係が見られないか、やや負の関係にあることが確認できた。これは、高校3年間で身につけた学力と大学で必要とされる学力に齟齬が生じていることを指し示している。これまでの研究では学力を静的で直線的なものととらえ、ややもすれば理念的な論争に陥りがちだったのに対し、本研究ではパネルデータを用いたことで学力を動態的に捉える事ができたため、中学・高校・大学における学力形成・発揮メカニズムの問題点を浮き彫りにできたといえる。
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