Research Abstract |
本年度は,教材開発のための準備として,(1)数学的探究の概念を規定してその教育的意義を導出すること,(2)教材開発の指針を得るために実際の生徒の活動を分析すること,以上の二点に取り組んだ。 (1) に関しては,まず他の証明研究者と協働の下,証明活動を捉える枠組みを暫定的に設定し,全国学力・学習状況調査の各設問について考察した。続いて,数理哲学者ラカトシュの主著『証明と論駁』の内容を具体的に検討することを通じて,数学的探究の側面として,事柄の推測と証明,証明の論駁と洗練,事柄の論駁と洗練の三つを導出し,それらの側面を合わせる形で数学的探究の概念を規定した。さらに,その数学的探究の教育的意義を,数学の創造的な側面の感得,能動的な証明学習の実現,広義の証明概念に基づくより早期からの数学的探究の実現の三点から考察した。 (2) に関しては,ラカトシュが発見法的規則として定式化している「補題組み込み法」と「演繹的推量による内容の増加」を分析枠組みとして,中学三年生の活動を分析した。その結果,反例をも例として含むより一般的な事柄を生成するためには,既存の事柄の証明を視点として,例と反例の境界について考察することが重要になることが明らかとなった。 また,第5回東アジア数学教育国際会議(平成22年8月,国立オリンピック記念青少年総合センター),第34回日本科学教育学会年会(平成22年9月,広島大学),及び第43回日本数学教育学会数学教育論文発表会(平成22年11月,宮崎大学)に参加して研究情報を収集するとともに,他の証明研究者と研究討議を行った。
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