2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22830037
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
笠井 直樹 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (80584143)
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Keywords | 財務諸表監査 / 監査人の独立性 / 監査人の勤続監査年数 / 監査報酬 / 監査市場における競争状況 |
Research Abstract |
本研究の目的は、監査人の独立性に影響を及ぼす複数の要因について実証分析を行うことである。特に、近年国内外で頻発したエンロン事件やカネボウ事件などの会計不祥事との関連から注目を集めている監査報酬、監査人の継続監査年数、監査法人間の競争状況の3つの要因に焦点をあてて分析を行った。 本年度は前年度に構築したデータ・ベースを基に、データ分析を行うとともに論文の執筆を進めるなど、研究成果の公表を中心に行った。また前年度に行った分析のうち、監査人の継続監査年数に焦点をあてた研究をさらに進展させた。具体的には、これまで先行研究によって指摘されてきた監査報酬の多寡と会計利益の質との関係に、監査人の継続監査年数がどのような影響を及ぼすのかを明らかにした。監査人の継続監査年数を加味した場合、先行研究が指摘するような監査報酬の規模の増大とともに会計利益の質が低下するという関係は確認できなかった。当該分析結果によって、監査報酬という単一の要因だけでなく、監査人とクライアント企業との関係を代理する複数の要因を同時に検討することの必要性が示唆されたといえる。さらに、監査法人間の競争状況が会計利益の質に及ぼす影響についても分析を進めている。監査人の継続監査年数の長さと監査法人間の競争状況には何らかの結びつきがあることが予想されるので、監査報酬も含めたこれらの要因が複合的に会計利益の質に及ぼす影響を明らかにすることができる可能性がある。 また、これまでは主に監査人側の要因に着目して分析を進めてきたが、会計利益の質に影響を及ぼす企業側の要因も重要である。特に,わが国では長らく企業間の株式持ち合いを通じて外部監査に代わり企業を規律付ける仕組みが存在していた。そこで、こうしたわが国企業固有の要因をこれまでの分析に組み込むことで新たな知見を得ることができる可能性が高い。
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