2010 Fiscal Year Annual Research Report
紛争後北アイルランドにおける「個人の物語」の位置―相互行為分析と言説分析から
Project/Area Number |
22830043
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
酒井 朋子 大阪大学, 大型教育研究プロジェクト支援室, 特任助教 (90589748)
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Keywords | 紛争 / ライフ・ストーリー / 集合的記憶 / 北アイルランド / イギリス:アイルランド / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本個人プロジェクトは、紛争の記憶や政治変動の経験について、個人が公的・半公的な場でライフ・ストーリーを語っていくことの、当該個人と社会にとっての意味や影響を分析していくものである。とくに北アイルランドの事例をとりあげる。本年度の前半は、以前の現地調査において収集した聞き取りデータのうち、本プロジェクトに関連するもののテープ起こしと分析を行った。この成果と関連する業績として、2010年7月の国際オーラルヒストリー会議での報告がある。また、現在この分析結果をまとめた論文を学術雑誌投稿用に執筆中である。 また、研究代表者は2011年2月中旬から3週間の間、北アイルランドに滞在し現地調査を行った。この調査では、現地の小規模コミュニティにおける「語りあい」のワークショップ、あるいは草の根のオーラル・ヒストリー・アーカイブの関係者に聞き取りをおこない、また関連資料を収集した。調査結果全体としては、計画内容と同等かそれ以上の有益なデータを得ることができたと言える。 なお、北アイルランドの事例に焦点を当てつつ、他の地域の事例あるいは言語以外の形態での証言とも比較考察をおこなっていくのも、本研究計画の重要な特色であった。そのための研究活動の一例が、政治的暴力や社会生活を主題に描くアルピジェラ(キルトの一種)の展覧会「抵抗を縫う-チリのキルトにおける触覚の物語」(於・大阪大学総合学術博物館、2010年10月12日~16日)の企画・開催である。この展覧会では、チリの政治暴力に関する証言収集の公的プロジェクトにかかわった経験をもち、また現在はヨーロッパを中心に世界各地でアルピジェラ展を行っている北アイルランド在住のR.バシック氏をゲスト・キュレーターに招き、ラウンド・テーブル形式の講演会も同時開催した。研究者や大学関係者のみならず広く一般に本プロジェクトの成果を知らしめうる企画であったといえる。 本年度の研究活動は、ほぼ計画通りに進められたと総括できるが、とくにデータ収集・整理、研究成果公開企画の点において高い成果があった。来年度は、補足的な現地調査をおこないつつも、本プロジェクトの成果を活字としてまとめていく執筆活動に、さらに力を入れていく予定である。
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Research Products
(6 results)