2010 Fiscal Year Annual Research Report
同一社会内での所得と子ども数の関係の変化に関する理論的研究
Project/Area Number |
22830047
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
安井 大真 神戸大学, 経済学研究科, 講師 (30584560)
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Keywords | 出生行動 |
Research Abstract |
出生行動に関する理論研究においては、前近代には同一社会内で所得と子ども数に正の関係があったのに対し、現代ではそのようなはっきりとした関係が観察されなくなったことは一つのパズルとされており、このパズルに対する一つの回答となりうる理論モデルを提示することが本研究の目的である。申請時点では静学的なモデルに基づき、比較静学による説明を試みていたが、400-500年間という長期にわたる現象に注目した研究であり、本質的には動学的なモデルによって分析されるべき課題である。そのような目的意識の下、本年度はモデルの動学化に取り組んだ。世代重複モデルへと拡張を行い、モデルの基本的なメッセージを失うことなく、動学的環境の下でも説明可能であることが確認できた。また、もともとは、同一社会内での所得と子ども数の変化というミクロ的な現象に注目していたが、上記のような拡張を行う中、同時期に観察された出生率の逆U字の推移というマクロ的な現象も同時に説明可能であることが判明した。今後、本モデルの現実に対する説明力を検証するために数値分析を行う予定であるが、そのための土台となるモデルがほぼ完成したと言える。さらに、イギリスを中心に多くの歴史資料を収集し、理論モデルの妥当性を確認した。数値分析を行うに当たって必要となるであろうデータの収集も行った。 関連研究として、19-20世紀に多くの西洋諸国で観察された逆N字の出生率の推移を説明する論文(The Galor-Weil gender-gap model revisited : from home to market)がJournal of Economic Growthの2010年12月号に掲載された。
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Research Products
(1 results)