2011 Fiscal Year Annual Research Report
サブ・サハラ・アフリカにおける文化的アプローチを取り入れた学力評価法の開発研究
Project/Area Number |
22830050
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
内田 豊海 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 研究員 (00585846)
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Keywords | 診断的評価 / サブ・サハラ・アフリカ / リテラシー / 弁別性 |
Research Abstract |
本研究は、教授的示唆に結びつく研究の蓄積が希薄なサブ・サハラ・アフリカにおいて(1)社会・文化性を加味した学力評価法を開発・実施し、(2)その調査結果から得られる教授的示唆がどれだけ授業・カリキュラム改善に寄与できるかを検討することを目的としたものである。 この目的を達成すべく、マラウイ、ザンビアにおいて、「計算能力」と「文章題読解力」について診断的評価法を開発した。まず事前調査を通し生徒の特性を把握した上で、できることとできないことを、難易度や解法過程を区切ることにより、幾つかの段階に設定し、理解の状態を弁別すべく試みた。 調査結果より、計算能力においては、生徒は数概念が欠如したまま、計算の演算技能の習熟を図ろうとしており、そのため、繰り上がりが含まれていたり、二桁以上の数を扱う計算の場合では、正確なアルゴリズムを適用することができず、生徒独自の方略を用いようとする傾向にあることが見られた。すなわち、数を量として捉えることなく、意味を含まない記号としてのみ認識している状態にある。 一方、文章読解力においては、自ら読んで解けない生徒でも、具体的場面を提示することにより、問題解決に到ることがわかり、さらに、それらの間に、幾つもの困難を抱えていることがわかった。文章を音読できても題意を把握できない生徒、読んでわからなくとも聴くことにより理解できる生徒、口頭での詳しい説明を受けて理解できる生徒、現地語による説明を受けて題意を把握しながら解くことができないものの、具体物を見た瞬間に問題解決できるようになる生徒などである。これらは、先進国の子どもを対象とした調査では見ることのできなかったものである。 これらの躓きにはマラウイとザンビアで相違が見られ、それぞれの国の文脈性が浮き彫りになった。またこれらの困難点の把握は、直接教授的示唆へとつながるものだと考える。
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