2011 Fiscal Year Annual Research Report
流動性の罠の状況における望ましい経済政策についての研究
Project/Area Number |
22830058
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
荒戸 寛樹 信州大学, 経済学部, 講師 (90583518)
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Keywords | 金融政策 / 財政政策 / 情報公開政策 / 流動性の罠 |
Research Abstract |
平成23年度は、主に研究の目的1「流動性の罠が経済成長に与える影響」について重点的に取組むと計画していた。計画通り、Arato(2009)のモデルを拡張し、金融政策が経済成長に与える影響を解析的に分析することが可能になった。その結果、コスト・ショックが存在する経済では、それによる経済変動が経済成長を非効率的に低下させ、経済厚生の大きな損失を生み出すが、これは金融政策を適切に行うことで対処可能なものであることがわかった。一方で、その適切な金融政策ルールはインフレ率および名目利子率を比較的大きく変動させるものであるため、名目金利の非負制約がバインドする可能性があることもわかった。この結論は、最適金融政策を議論する際には経済成長を考慮にいれる必要があることを示唆しており、今後さらなる研究が必要である。この研究の成果は複数の研究会で報告しており、現在論文の執筆中である。 また、研究目的の3「流動性の罠下における情報公開政策の重要性」についても、Morris and Shin (2002)のモデルを複数地域モデルに拡張することによって、Arato and Nakamura (2011)で発見された「政府の曖昧な情報公開による経済厚生の上昇」とほぼ効果を「複数国の平均状態についての情報公開」で達成できることを発見した。この結論は特にEUにおける欧州中央銀行など、経済状況の異なる複数の国・地域を管轄する政策当局に対して有益な政策的含意を与えると考えられる。この研究は中村友哉氏との共同研究として論文にまとめ、現在査読付き学術雑誌に投稿中である。
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Research Products
(4 results)