2010 Fiscal Year Annual Research Report
経営者報酬の開示がコーポレート・ガバナンスに与える影響に関する分析
Project/Area Number |
22830060
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
田中 佳容 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 客員准教授 (50579886)
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Keywords | 経営者報酬 / コーポレート・ガバナンス / 開示 |
Research Abstract |
平成22年3月31日施行の改正企業内容等の開示府令において、1億円以上の報酬を得る役員につき個別に役員報酬を開示する旨が義務付けられた。本研究初年度は、当該開示元年にあたる。研究の目的である当該規則の導入がわが国企業のコーポレート・ガバナンスに及ぼす影響を実証的に分析し、明らかにするためにまずその開示元年の実態を検証し、当該企業全社にアンケート調査を実施した。 まず1つ目の成果として、初年度、1億円以上の個別開示を実施した企業167社の基礎データを整理したことである。また、2つ目の成果として、これらの個別開示企業全167社にアンケート調査を実施し、約1割の企業より有効な回答を得、(1)開示に至るまでの経緯、(2)開示が企業に与えた影響についての長短や改善点、(3)開示の基準額として適正と思われる額など、開示報告者側の意見を整理したことである。 以上の調査を通じて、以下の意向を確認することができた。(1)報酬の総額開示には賛同するものの個別開示には異を唱えるといった意見が多く挙げられた。(2)開示報告者側にとりメリットよりデメリットの方が大きいとする意見も多数散見された。(3)今般の改正に対し、情報強化・透明性を目的としたその趣旨は理解しているものの唐突な改正といった印象は否定できないといった意見が多かった。 (4)米国型の叙述的な開示方式についてはわが国では必要ないとする意見が多かった。 このように、開示初年度、混乱の中で報告者側が開示に踏み切ったことが浮き彫りとなり、その一方で改善の余地が多く残されていることも示された。
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