2011 Fiscal Year Annual Research Report
経営者報酬の開示がコーポレート・ガバナンスに与える影響に関する分析
Project/Area Number |
22830060
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
田中 佳容 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 客員准教授 (50579886)
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Keywords | 経営者報酬 / コーポレート・ガバナンス / 開示 |
Research Abstract |
研究最終年度は、1億円以上の報酬を得る役員につき、個別に役員報酬の開示が義務づけられた2年目に当たっており、初年度分と併せ2ヶ年分のデータが蓄積された。そこで当該データを基に、個別開示制度導入によるわが国企業の開示実態を調査し、実証分析を行った。初年度における個別の役員報酬額開示企業は168社、289人であった。2年目となる本年度は224社、362人と企業数、個別開示役員数とともに増加していることを明らかにした。また、個別開示、個別非開示(つまり総額開示)で2ヶ年分のデータを分類したところ、2ヶ年ともに開示した企業は134社(グループ1)、初年度は個別開示をしなかったが(総額開示)2年目に開示した企業は90社(グループ2)、初年度開示したが2年目は非開示(総額開示)となった企業は34社(グループ3)であった。このグルーピングを用いて3つの仮説を立てて分析を行った。仮説は、H1:グループ1の企業は両年度ともに業績が好調である、H2:グループ2の企業は初年度に比べ2年目に業績が向上した、H3:グループ3の企業は初年度に比べ2年目に業績が落ち込んだ、である。これらの仮説を検証するため分析対象企業となる個別開示企業とコントロール企業(総額開示企業)を抽出し(コントロール企業は、同一市場に上場し、産業分類が同一であり、総資産、売上高の規模が同等であることを条件に選択した)、両者を比較することで上記の仮説を検証した。結果、H1、H2ともに統計的に有意な結果が見られた。また外国人株主比率、社長持株比率が高く、社長就任後の存続年数が長いという特徴もみられた。一方、H3は統計的に有意な結果を得られず、グループ3の企業は業績とは別の要因により非開示となったことが示唆された。そしてグループ3の企業は外国人持株比率、社外取締役比率が低く、取締役会の規模も小さいという特徴をもつことを明らかにした。
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