2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22830063
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
友田 康信 公立大学法人神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30437280)
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Keywords | 経済理論 / 経済政策 |
Research Abstract |
本研究においては、複数の産業が存在する経済モデルを考察し、(1)人々の職業選択と人的資本の形成を通じて、所得格差が永続化するメカニズムを明らかにする新たな理論的枠組みの提示、(2)そのような経済モデルにおける最適な教育政策、特に最適な公教育政策の分析を行うこと、以上2つの個別研究テーマを設定した。平成23年度は、上記の研究課題に関連する2本の論文が、査読付学術雑誌に掲載ないし掲載されることが決定した。 一本目の論文は「公教育と賃金格差」であり、『地域学研究』に掲載された。公教育制度では生まれた家庭の貧富に関わらず教育を受けられるので、既存の経済動学モデルにおいて、公教育制度下で所得格差が解消するという結論が一般的である。しかし、本本研究において、人々が自らの比較優位に基づいて職業選択を行い、教育部門における人的資本の産出弾力性が高い場合には、公教育下においても所得の不平等が永続化することが明らかとなった。これは、公教育では所得格差を十分に解消できない可能性を示す、重要な成果である。 .二本目の論文は"Human Capital Kuznets Curve with Subsistence Consumption Level"であり、Economics Lettersに掲載されることが決定した。Human Capital Kuznets Curveとは、人的資本蓄積が経済成長のエンジンとなる場合、経済発展の初期段階では人的資本水準の格差は拡大するが、経済発展に伴い格差が縮小するというものである。本稿では、教育支出は奢修品であることに注目し、既存研究に比べはるかにシンプルかつ説得力がある理論的枠組により、この現象を説明することに成功した。
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Research Products
(3 results)