2010 Fiscal Year Annual Research Report
過疎・高齢化社会における祭祀の継承困難についての社会学的研究
Project/Area Number |
22830067
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
植田 今日子 東北学院大学, 教養学部, 講師 (70582930)
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Keywords | 過疎・高齢化 / 離島 / 祭祀 / 海神祭 / 神人(カミンチュ) |
Research Abstract |
平成22年度の研究成果 具体的調査内容 フィールドである沖縄県国頭郡今帰仁村の古宇利地区および塩屋地区において、祭祀(海神祭)の実施状況を調査した。調査は古宇利地区および塩屋地区で祭祀の行われていない平常時に祭祀の実施組織の運営形態について聞き取り調査を行った。また祭祀の実施されている時期(古宇利地区におけるウマチー)にも祭祀の参与観察を行った。 また、文献および資料の調査としては沖縄県公文書館および沖縄県立図書館において両地区の土地の一筆ごとの絵地図である「一筆地調査図」、港の近代化や医療、近代水道の普及の経緯をたどることのできる工事資料(おもに戦後直後の返還前の琉球政府時代)を収集した。以上の資料は、門中という父系親族組織ごとに輩出されてきた祭祀の中心的担い手である「神人(カミンチュ)亅がどのような時代状況にありながら減少していったのかを明らかにするためであった。 現在のところ明らかになっているのは、漁業の近代化や地区外での賃金労働機会の増大が神人の輩出困難が生じる時代と符合するということである。一方で古宇利地区においては、現在80代や90代の女性が、神人が多く存在した時代に大阪等へ出稼ぎにいっていたということが明らかになっている。従って、一度賃金労働をきっかけとして地区外にでたからといってかならずしも神人が輩出困難となるとはいえない。この相違を明確にする必要があることが明らかになった。 研究の意義 塩屋地区、古宇利地区の両地区とも過疎・高齢化や生業の賃金労働化による若者の雇用機会の減少と向き合う地域である。しかし一方で両地区では、祭祀が途絶えることを危惧しない住民は存在しない。それは過疎・高齢化しつつある両地区において、祭祀が必要であると認識されているからである。これがなぜかを問うことは、多くの過疎・高齢化する地区において祭祀が人口の再生産には寄与しないものの、そこで生きていくうえで必要とされる関係性の再生産において必要不可欠と認識されているからであろう。この必要性の内実の検証は、過疎・高齢化に苛まれる多くの地域社会において示唆をもつと考える。
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Research Products
(1 results)