2010 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ知的障害親の会レーベンスヒルフェの成立史研究:特殊教育制度拡充策との親和性
Project/Area Number |
22830070
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
松本 瑞穂 文京学院大学, 人間学部, 助手 (60588010)
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Keywords | 社会福祉 |
Research Abstract |
2010年度は春に4週間程度、ドイツ現地調査を実施した。その主な内容は以下の4点である。1)ヘッセン州マールブルクにて、レーベンスヒルフェ本部のベルリンへの移転状況の視察及びヒアリング、2)通説で創設者とされるトム・ムッタースが、創設前夜に働いていたフィリップス病院の視察(ここでのムッタースの活動は、レーベンスヒルフェ創設の契機となったとされる)、3)バイエルン地域支部の元リーダー(1976-1987年)で、身体障害児の母でもあったハイディ・ハーラー氏へのインタヴュー、4)創設拠点であるマールブルク大学医学部・児童精神医学部の歴史調査。 なかでも、とりわけ成果が大きかったのは3)である。筆者は当該科研申請時、「通説とは異なり、創設メンバー(大半が後に理事となり後年まで影響力を行使し続ける)の大半が学識関係者であったならば、レーベンスヒルフェの活動が、戦後ドイツの特殊学校拡充施策や、それに付随する専門職養成課程整備の動きと、ある程度連動するのではないか」という疑問を提示した。ハーラー氏より得られた情報は、この疑問に、ごく部分的ではあるが答えるものであった。彼女は1981年前後、バイエルン州フュルトで小学校でのインテグレーション教育の創出に尽力したが、これはことごとく実現しなかった。その理由を彼女は、当時のバイエルン地域支部の理事が特殊学校教員(Sonderschullehrer)であったためと述懐している(なお、学識関係者を中心とする創設メンバー及び初期理事たちが、専門職を施設ごと翼下に抱え込み、専門職養成・研修に注力したことは、筆者博士学位論文に詳しい(首都大学東京))。 なお、2010年度の実施内容は交付申請書の記載内容とは部分的に異なっているが、当該研究の課題解明のために必要不可欠な作業であることを付言しておく。
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