2010 Fiscal Year Annual Research Report
非貿易財産業の拡大が失業率に与える影響に関する理論・実証分析
Project/Area Number |
22830076
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
今 喜史 青山学院大学, 経済学部, 助教 (10587471)
|
Keywords | サーチ理諭 / 失業率 / 非貿易産業 / 雇用動向調査 |
Research Abstract |
1990年代以降の日本における労働市場の特徴として、失業率が4から5%という従来よりも一段と高い水準で推移していること、また経済のいわゆるサービス化に伴い、非貿易財産業の就業者割合が継続的に高まっていることが挙げられる。本研究の目的は、これら2つの現象にいかなる関連があるのかを、理論的および実証的に明らかにすることである。平成22年度に行った研究では、第一にサーチ理論の応用により、貿易財産業と非貿易財産業という2つの産業の関連を分析した。第二には、厚生労働省「雇用動向調査」のデータを産業別に分析し、非貿易財産業の雇用の特徴を検証した。 サーチ理論に基づく分析により、「求人コスト」が産業間で異なる場合、産業構成の変化が失業率に影響を与えるということが示された。すなわち、企業が求人を出す際に要するコストが高い産業では相対的に求人が過少となり、このような産業の拡大は失業率を上昇させる要因となる。非貿易財産業の求人コストが仮に貿易財産業よりも高いとすれば、こうしたサーチ理論の指摘するメカニズムにより、日本の失業率の動向が部分的にではあるが説明される可能性がある。 また、雇用動向調査のデータによると、非貿易財産業では離職率と入職率がともに貿易財産業と比較して相対的に高い。したがって、非貿易財産業の拡大は、雇用の不安定化と表裏の関係にあることが示唆される。離職率や入職率がどのような要因によって規定されるのか、来年度は計量経済学のパネルデータ分析の手法により、さらなる検討を加える予定である。
|
Research Products
(1 results)