2011 Fiscal Year Annual Research Report
非貿易財産業の拡大が失業率に与える影響に関する理論・実証分析
Project/Area Number |
22830076
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
今 喜史 青山学院大学, 経済学部, 助教 (10587471)
|
Keywords | サーチ・マッチング理論 / 非貿易財 / 雇用消失率 / 均衡失業率 |
Research Abstract |
従来の研究では、貿易財産業と非貿易財産業というふたつの就業機会がある場合、労働者が少しでも有利な雇用環境を求めて裁定を行う結果、期待賃金が均等化するという仮説が広く受け入れられてきた。この場合、経済には「高賃金かつ高失業率」の産業と、「低賃金かつ低失業率」が併存することとなる。よって、もし経済全体で失業率の上昇が観察されるとすれば、それは高賃金の産業の拡大を伴うはずである。しかし、近年の日本では失業率の上昇と非貿易財産業の拡大が進行し、非貿易財産業は製造業などの貿易財産業よりも低賃金である。「低賃金かつ高失業率」の産業が拡大しているという現状は、期待賃金の均等化という仮説とは整合的ではない。 そこで本研究では、仕事の見つけやすさだけではなく、見つけた後の仕事の安定度も考慮したサーチ・マッチング理論の動学モデルを分析した。具体的には、雇用消失率が産業によって異なるという仮定を導入することにより、非貿易財産業を「低賃金で仕事を見つけやすいが、雇用が不安定である」と特徴づけた。これは、非正規雇用の比率が非貿易財産業において高いという事実とも整合的な設定である。この場合、国際貿易の自由化により、国内の非貿易財産業の雇用シェアが拡大すると、失業率の上昇と同時に、低賃金の仕事の割合が増えることとなる。 この結果は、失業率の理論的な分析において、雇用消失率あるいは雇用の不安定度という要因を考慮することの重要性を示したものといえる。
|
Research Products
(3 results)