2010 Fiscal Year Annual Research Report
乳腺外来患者(がん患者)の遺伝に対する意識と心理的ストレスに係る臨床心理学的研究
Project/Area Number |
22830078
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
安藤 記子 北里大学, 薬学部, 助教 (30586376)
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Keywords | 乳がん / 心理的ストレス / 遺伝に対する意識 / 遺伝カウンセリング / 遺伝性疾患 |
Research Abstract |
乳腺外来愚者が抱く遺伝に対する意識に関する特徴を明らかとするため、乳腺外来を初診にて受診した患者(確定診断前)233名に対して実施した面接調査から、遺伝に関する意識を自発的に表出した患者を抽出したところ、39人(16.7%)の患者が臨床心理士との面接において自発的に遺伝に関する内容を語っていた。乳がん家族歴があり遺伝に関する意識を表出した患者、乳がん家族歴がなく遺伝に関する意識を表出した患者、乳がん家族歴があり遺伝に関する意識を表出しなかった患者、および乳がん家族歴がなく遺伝に関する意識を表出しなかった患者の4群における心理的ストレス(質問紙:Profile of Mood Statesにて測定)を比較したところ、これらの患者間に有意な心理的ストレスの差は見いだせなかった。すなわち、乳がん家族歴や遺伝に関する意識は、確定診断前の患者にとって心理的ストレスとは関連がないことが明らかとなった。しかしながら、面接内容の質的分析より、家族歴があるものの中でもそれを肯定的にとらえている患者・否定的にとらえている患者がおり、個別のとらえ方を踏まえた対応が医療職者には望まれることが明らかとなった。本研究成果は、実際の臨床現場に還元される有用な知見であり、現在学術論文としてまとめ、Familial Cancer誌に投稿中(査読中)である。 臨床研究として「遺伝カウンセリング研究」に取り組む意義は大きいにも関わらず、日本国内において遺伝カウンセリング研究を科学的に実施する研究者は少なく、研究指導体制そのものが脆弱な現状がある。この状況に関して専門家内での討論を実施する場として、日本人類遺伝学会第55回大会シンポジウム「サイエンスとしての遺伝カウンセリング研究」が企画された。報告者は本シンポジウムの座長および講演者を務め、本研究課題の結果を例示しながら、研究の有用性について討論を行った。
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