2011 Fiscal Year Annual Research Report
抽象レベルでの行動の順序制御における前頭前野の役割
Project/Area Number |
22830086
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
中山 義久 玉川大学, 脳科学研究所, グローバルCOE研究員 (30585906)
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Keywords | 前頭前野 / 到達運動 / 前頭葉 / 単一ニューロン |
Research Abstract |
平成23年度は、抽象レベルでの行動の制御過程に、背外側前頭前野がどのように関わるかを検討するため、実験を行った。前年度までに作成した抽象レベルの動作と、運動レベルの動作を時間的に分離することが可能な課題を用いた。指示刺激として図形(たとえば黄色い丸)がサルの眼前にあるタッチセンサー内蔵のモニターの中央に呈示される。この指示刺激は、後の反応(右または左への到達)を指示するものである。遅延期間の後、2つ目の指示刺激が画面の中央に呈示される。このように、指示刺激が3回連続で呈示された後に、画面に選択刺激が呈示される。選択刺激は2つの四角形より構成されており、右または左への到達がサルには求められる。選択刺激は、画面の水平方向のどこに呈示されるかはランダムであり、この選択刺激が呈示されるまでは画面のどこに到達すればよいのかを決定することはできない(運動レベルの動作を決定できない)。選択刺激の色が灰色から白に変わることで、運動の実行を指示する。この課題を遂行中のサルの背外側前頭前野の神経細胞活動を記録し、解析を行ったところ、以下のような知見を得た。背外側前頭前野の腹側部では、指示刺激(抽象レベルでの右または左への到達を指示)の視覚的特性を反映するのみならず、選択刺激の空間的な位置情報の反映が行われていた。一方、背外側前頭前野の背側部では、視覚刺激の視覚的特性よりもその指示内容(抽象レベルでの右または左への到達)の獲得と把持が行われ、運動レベルの動作の決定時にも抽象レベルでの動作の情報を強く受けることが明らかとなった。これらの結果は、前年度までに得られた運動前野背側部の細胞活動とは特徴が異なるものであった。以上より、抽象レベルでの行動の制御過程における背外側前頭前野の特徴的な役割が明らかとなったといえる。
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