2011 Fiscal Year Annual Research Report
日米における公的扶助の諸条件とその正当性に関する研究
Project/Area Number |
22830088
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
野田 博也 日本女子大学, 人間社会学部, 助教 (00580721)
|
Keywords | 公的扶助 / 条件 / 生活保護 / 第二のセーフティネット |
Research Abstract |
公的扶助は、何らかの貧困証明を要件として給付を支給する政策である。公的扶助の給付には利用負担がない反面、給付の条件(コンディショナリティ)として様々な制約を課して利用者の自由や自律に否定的な影響を与える側面がある。 日本の公的扶助を代表する生活保護制度は、アメリカ公的扶助のように断片化されておらず、単一省庁の実施による一体型の制度設計である。また、有期制でなく、在宅保護での給付形態は現金を原則としており比較的に寛容な側面がある。他方で、複数の種類の財物が生活扶助、医療扶助、住宅扶助等としてひとまとめになっていることは制度内の整合性という点で優れているものの、一つの資源の利用を拒否すると他の資源の利用が認められない場合もあり、給付を選択する自由という点では制約が比較的に強い。なお、就労が社会的に強く求められない世帯への扶助は、アメリカの場合は条件の緩い別建ての制度が応じているが、日本の場合は同一制度が応じ運用レベルによって条件の寛厳を調整している違いがある。 しかし、公的扶助の範囲を2008年金融危機前後に増加した「第二のセーフティネット」にまで広げると事態はやや異なる。いくつかの先行研究がすでに指摘しているように、第二のセーフティネットに該当する一連の事業は、給付の内容や要件等が整合的でなく、利用窓口も異なり、公的扶助の中心となる生活保護との関連についても曖昧になっている。この状況は断片化の形相を呈している。ただし、これらの新興事業は省庁レベルでみれば厚生労働省を中心としており、法律レベルで成立してないものも少なくなく、かつ、生活保護の上(利用前)に位置づく政策内の特徴にとどまる。このため、より複雑なアメリカ公的扶助の断片化とは同一視できない。 このような条件をもつ公的扶助の正統性は、資本主義社会における自助原則との関連で消極的に認められる場合と、自立・自律した個人とする目的でより積極的に付与される場合がある。
|