2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳内に生成される物体知覚表象による視覚的意識の消失現象の解明
Project/Area Number |
22830094
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
日高 聡太 立教大学, 現代心理学部, 助教 (40581161)
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Keywords | 仮現運動 / 運動物体表象 / 知覚意識 / 検出感 / マスキング / 物体特徴 |
Research Abstract |
2つの物体を時空間的に離れた位置に交互に提示される場合,運動軌道上には何ら物理的入力が存在しないにも関わらず,物体間に滑らかな動きが物体間に知覚される。本研究の目的は,この仮現運動場面において運動軌道上に内的に形成される運動物体表象が,物理的な入力の知覚意識を消失させることを新たに示し,この現象を足がかりに脳内にのみ存在する知覚表象の特性を明らかにすることである。今年度はまず,予算の執行後ただちに必要機材を入手し,予備的な検討から最適な刺激パラメータを選定した。次に本実験を行ったところ,特に視野の周辺において,仮現運動軌道上では瞬間的に提示されるターゲット物体の検出できなくなることが示された。この現象は,仮現運動が知覚されない場面やターゲット物体が運動軌道上に提示されない場面では生じなかった。さらに,仮現運動物体とターゲット物体との間で傾きや位相といった物体特徴の一致・不一致を操作した。その結果,物体間で傾き情報が一致しない場合には,検出の抑制効果が生じないことが示されたが,位相情報に関してはそのような効果は見られなかった。これは,実際に存在する物体同士で生じるマスキング効果と極めて類似した現象特性である。以上のこと_から,仮現運動軌道上では,脳内に生成される物体知覚表象が実際に存在する物体と同じ様な振る舞いで,他の物体の視覚的・知覚意識を消失させることが分かった。この研究成果は,Journal of Vision誌に投稿中であると共に,来年度の日本心理学会などで発表予定である。また,これまで行ってきた本研究課題の予備的検討の成果が,The Japanese Journal of Psychonomic Scienceに招待論文として掲載された。
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