2011 Fiscal Year Annual Research Report
普遍主義的社会政策の比較政治学:質的・量的アプローチによる国際比較研究
Project/Area Number |
22830098
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
稗田 健志 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (30582598)
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Keywords | 比較政治学 / 比較政治経済学 / 比較福祉国家論 / 普遍主義的社会政策 / 新しい社会的リスク |
Research Abstract |
申請者の研究課題では、ある福祉国家では市民権とニーズに応じてサービスの給付をうける普遍主義的社会サービスが発展し、他の福祉国家では拠出に応じて給付を受ける社会保険型の現金給付プログラムに社会支出が集中しているのは何故か、という問いの解明に取り組んだ。本年度の研究では、質的ケーススタディおよび計量分析から次の点を明らかにした。第一に、スウェーデン、日本、アメリカ合衆国の20世紀における高齢者介護政策をめぐる政治過程を辿るケーススタディと、先進工業15カ国の高齢者介護支出を多変量解析の手法を用いて分析した研究により、選挙制度と政党システムが政治アクターに異なるインセンティブ構造を与え、結果として高齢者介護政策の展開が大きく異なるものとなったことを明らかにした。第二に、公的保育施策や積極的労働市場政策の近年の展開においては、脱工業社会化によって登場してきた新しい社会的亀裂である「リバタリアン対権威主義」の対立軸が重要な役割を果たしてきたことを多変量回帰分析の手法により明らかにした。すなわち、政党公約集のテキスト分析から先進工業18カ国の各政党のそれぞれの選挙における再分配軸および社会的価値軸上の政策位置を特定し、そうした政党から構成される連立(あるいは単独)政権の二次元政策空間上の政策位置を推定し、二次元政策空間上の「左派-リバタリアン」政権が公的保育支出の拡大と積極的労働市場政策の拡大に最も親和的であることを示したのである。以上の研究成果から、選挙制度が戦後福祉国家の発展過程においては普遍主義的社会政策の展開を規定してきたが、近年の産業構造および社会構造の変化により社会的リスクの構成が変化し新たな施策が求められ始めると、脱工業化の下で変容した新たな政党システムもまたそうした「新しい社会的リスク」に対応した社会政策の展開に影響を与えていることが明らかになったといえる。
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Research Products
(6 results)