2010 Fiscal Year Annual Research Report
開かつ匿名な環境における共同成果配分問題の提携型ゲーム理論による分析
Project/Area Number |
22830101
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
近郷 匠 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (70579664)
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Keywords | 配分問題 / 提携型ゲーム / 公理的特徴付け |
Research Abstract |
インターネット上のように参加が自由で参加者の特定が容易でない環境における,複数の意思決定主体による協調行動の成果としての経済的余剰の配分問題を,主に提携型ゲーム理論を用いて理論的に考察した.このような問題の現実社会における具体例としては,近年隆盛を極めているインターネットオークションなどが挙げられる.ネットワーク上では,参加者の参入・退出が自由であり,また自身の能力の一部を隠し,部分的に参加することも可能である.さらに,一参加者が複数のIDを用いてあたかも複数参加者のように,あるいは複数参加者が共通IDを用いてあたかも一参加者のように振舞うことも可能である.参加者のこういった戦略的行動は,従来の提携型ゲーム理論で研究されてきた,配分ルールの望ましさの基準である効率性や対称性,公平性などに重大な影響を与える.そこで,そういった環境における配分ルールの適切な望ましさの基準を,従来の基準を適宜修正する形で定式化し,それらいくつかの基準を同時に満たす望ましい配分ルールの存在を考察した.その際に,従来の提携型ゲーム理論の拡張である,提携構造付きの提携型ゲームを援用することで,前述のIDを通じた参加者の戦略的行動を提携構造の変化として扱う.これにより,IDを通じた参加者の戦略的行動を,他の基準と同様に公理として並列的に扱っている.現段階での成果としては,様々な望ましい基準を同時に満たすルールの存在の困難さを得ている.現実問題への応用を念頭に置くと,今後は配分ルールの存在を保証する,望ましい基準の組み合わせの明示や,その配分ルールの実現する体系的な制度の設計が目標となる.
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