2011 Fiscal Year Annual Research Report
知的財産法政策形成過程における正当化根拠論の意義-問題発見・対話促進機能の探求
Project/Area Number |
22830110
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山根 崇邦 同志社大学, 法学部, 助教 (70580744)
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Keywords | 正当化根拠 / パテント・リフォーム / 制度論的研究 / 正義論 |
Research Abstract |
研究実施計画に従って本年度に実施した研究の成果は、次の通りである。 第1に、米英の最新の正当化根拠論の議論動向を渉猟しながら、従来最も有力な理論とされてきた事前のインセンティヴ論の意義と限界を明らかにするとともに、近年注目されつつある正義論の意義と限界を探求する研究に取り組み、その成果を雑誌『知的財産法政策学研究』において公表した。本研究成果に対しては、『法律時報』2011年学界回顧欄において力作との評価を頂くことができた。本研究の意義や重要性が学界において認められたものと考える。 第2に、これまで取り組んできた知的財産権の原理的考察が、例えば著作権保護期間延長問題や特許制度改革といった現代の政策課題の解決にとってどのような意義を持ちうるのかを探求する研究に取り組み、その成果を著作権法学会および日本工業所有権法学会において個別報告として発表し、報告内容をまとめた論文を学会誌に投稿した。著作権保護期間延長問題との関係では、立法過程において正義論および帰結主義的検証を有機的かつ協働的に用いることで、立法者の答責性を高め、立法目的の明確化・実質化を促し、立法目的と手段との整合性のとれた立法の適正化に寄与しうることを指摘した。また、特許制度改革との関係では、立法・行政・司法の各機関が原理的知見に開かれた学習機能を有効に活用することで、多様かつ動態的な産業ニーズへの漸進的な適応および特許制度の機能改善に寄与しうることを指摘した。 第3に、PETER DRAHOS,A PHILOSOPHY OF INTELLECTUAL PROPERTY(Dartmouth Press,1996)の翻訳に取り組み、雑誌『知的財産法政策学研究』において翻訳成果の連載を開始した。現在までに、全9章のうち、第5章までの翻訳成果の公表を終えた。本研究成果に対しては、翻訳の連載開始直後から憲法学者のブログで取り上げられ、また『年報知的財産法2011』において今後の連載が楽しみとの評価を頂くことができた。
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Research Products
(13 results)