2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヴィリー・ブラントの東方政策と冷戦の終焉に関する研究
Project/Area Number |
22830112
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
妹尾 哲志 同志社大学, 政策学部, 講師 (50580776)
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Keywords | 東方政策 / ドイツ外交 / 冷戦史 / 国際政治 / 国際関係論 / ヨーロッパ政治 / 外交史 |
Research Abstract |
2010年度は、ブラントの東方政策を多角的観点から考察するという研究の目的に沿って、関連する文献・資料の収集につとめることと併せて、以下の三つの研究成果を発表した。第一に、東方政策における米英仏を中心とした西側諸国との関係について、1970年に締結されるソ連とのモスクワ条約の交渉過程と並行した西側諸国との意見調整に注目して考察した。そこでは、第二次世界大戦後のヨーロッパの国際関係を大きく規定した冷戦という状況の下で、東西の間を自由に動くドイツ外交や独ソ接近を警戒する西側諸国に対して、ブラント政権が積極的に意見調整に取り組んだ点が明らかにされた。第二に、ブラント政権の東方政策をめぐる西ドイツ国内の与野党を中心とした対立を分析した。分断国家として成立した西ドイツが、目標として統一を掲げ続けたものの、事実上分断を固定化しかねない内容の条約をソ連やポーランドと締結することに対して、西ドイツ国内の抵抗は決して少なくなかった。しかしブラント政権は、こうした国内からの批判によって苦境に立つ一方で、条約に至る交渉過程や西側諸国との意見交換の中で国内の強硬な反対論に言及することで、有利に交渉を進めようとした点を指摘した。第三に、東方政策がいかに冷戦の終焉に影響を与えたのかに関連して、冷戦史研究に関する著書の書評会のコメンテーターを務めた。以上の三つの成果と並行して、ボン大学に提出していた博士論文の公刊に向けて準備を進め、2011年1月に刊行の運びとなった。現在は日本語での著書の執筆に取り組んでいる。さらに同年3月にはドイツのボン、コブレンツ、ベルリンにて一次史料の収集を中心とした現地調査を行い、その成果を次年度以降の研究に反映させていく予定である。
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Research Products
(4 results)