2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22830113
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
及川 昌典 同志社大学, 心理学部, 助教 (40580741)
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Keywords | 社会心理学 / 社会的認知 / 自己過程 |
Research Abstract |
平成23年度前半には、前年度の成果(多重自動性モデルとその調査データ)に基づいて導かれた新たな仮説を検証するための一連の研究が実施された。前年度に開発された新たな測定法(改訂感情誤帰属手続きなど)や、新たな実験手法(ボーガスプライミングなど)を組み合わせた一連の実証研究を通じて、自己制御における種類の異なる自動性の働きを東洋文化圏(日本など)と西洋文化圏(オランダなど)で比較することにより、文化依存性/文化独立性(通文化性)の観点から、生得的な自動性と獲得された自動性の特徴の違いについて検討が行われた。多重自動性モデルに基づけば、生得的な自動性は文化を問わず一定の結果を導くが、獲得された自動性は文化に応じて異なる結果を導くと考えられる。一連の研究の結果、心的過程には文化を問わず同様の結果をもたらす経路と、文化に応じて結果が異なる経路が存在し、生得的な自動性は意識的にアクセス可能な文脈情報に影響されない頑健な特徴を持つが、獲得された自動性は意識的にアクセス可能な文脈情報の変化に柔軟に対応する性質を持つことが示唆された。 平成23年度後半には、これまでの研究の成果がまとめられ、国内外の学会、学術雑誌、著書などを通じた報告が行われた。多重自動性モデルに基づけば、生得的な自動性は意識的な統制が困難である特徴を持つが、獲得された自動性に関してはその限りではないと考えられる。このような新たな視点に基づいた、研究成果は3本の学術論文にまとめられ、その一部は、Consciousness and Cognitionに掲載が決定している。また、従来の動機づけ研究における位置づけに関しては、著書『モティベーションをまなぶ12の理論』(金剛出版)にまとめられた。日本心理学会第75回大会では、これまでの研究では困難であるとされてきた、自動性を統制するための筋道を示すことを目的としたワークショップが行われた。日本社会心理学会第52回大会、ならびに米国性格社会心理学会第13回大会(Society for Personality and Social Psychology)では、これまでの研究では扱われることのなかった、自動性に基づく決定が意識的体験に及ぼす影響に関する報告が行われた。
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