2011 Fiscal Year Annual Research Report
国立ハンセン病療養所と地域の関係にみる生活支援の社会的基盤形成に関する研究
Project/Area Number |
22830127
|
Research Institution | Shiraumegakuen College |
Principal Investigator |
新田 さやか 白梅学園短期大学, 実習指導センター, 助教 (50584629)
|
Keywords | 社会福祉関係 / ハンセン病問題 / 社会的排除 |
Research Abstract |
本研究は社会福祉と社会的排除に関わる研究として、国策によって社会から隔離・排除されてきたハンセン病回復者の生活を支援する社会の基盤づくりについて、国立療養所と自治体と地域との関わりのあり方という視点から考察することを目的とした。今年度は国立療養所13園の入所者自治会を対象に各園の将来構想と地域との関わりのあり方について郵送アンケート調査を実施した(2011年12月22日~2012年1月20日)。調査の結果、13園中9園に将来構想を検討するための組織や委員会が設置され、その内6園では策定された計画の実行に向けた動きが進んでいる。アンケート調査実施後、5つの療養所入所者自治会(国立駿河療養所、国立療養所松丘保養園、国立療養所沖縄愛楽園、国立療養所長島愛生園、国立療養所邑久光明園)と市民の会(名護市民の会)へのヒアリング調査を実施した。調査からは将来構想に関わる現状が把握できた。ハンセン病問題基本法に「ハンセン病の患者であった者等が、地域社会から孤立することなく、良好かつ平穏な生活を営むことができるようにするための基盤整備は喫緊の課題」とある。高齢化が進み運営上に大きな困難を抱える入所者自治会が中心となって、所在自治体、地域住民、支援団体等と療養所の地域開放に向けた話し合いを進めている。しかしハンセン病回復者が地域とつながりを持ちながら生活できる社会の基盤づくりには、国の消極的な取り組み姿勢、社会の側のハンセン病問題基本法に対する理解の不十分さ、地域からの交通アクセスの不便さ、地域開放に対する療養所入所者の感情への配慮、近隣住民のハンセン病回復者に対するいまだ消えない心の壁、など解消すべき課題が多く存在する。そのような中で、地域住民向けの保育所開設、外来診療の実施、社会交流を目的とした施設の開設など、現在具体化されつつある計画についてその実現に向けた過程を分析していく必要性を見出した.
|