2011 Fiscal Year Annual Research Report
バイリンガル・アプローチを用いた聴覚障害教育における教室談話分析
Project/Area Number |
22830129
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Research Institution | Beppu University Junior College |
Principal Investigator |
阿部 敬信 別府大学短期大学部, 准教授 (90580613)
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Keywords | 聴覚障害教育 / バイリンガル / 日本手話 / 教室談話分析 |
Research Abstract |
研究第2年次となる平成23年度は,研究第1年次において行ったバイリンガル・アプローチを用いている聴覚障害教育における教室談話分析の観点を踏まえて,私立の聴覚障害特別支援学校において本調査及びトランスクリプトの分析を行った。 教室談話分析のための授業実践のビデオデータを収集するとともに,研究第1年次のビデオデータからトランスクリブトを作成し,分析の観点として抽出した視覚的かつ言語的ストラテジーである日本手話の言語的特徴を生かした指導場面について、指さし(Pointing)、視線、指文字、CL(Classifier)、RS(Referential Shift)に着目して,手話言語学の見識のある日本手話母語話者らとともに分析を行った。その結果,指さしや視線が日本手話と日本語によるバイリンガル・アプローチにおける教室談話では重要な役割を果たしていること,指文字による書き言葉の提示はほとんど行われていないこと,RS・CLにより文脈依存しないテキストによる説明を行っており,「学習言語」レベルの談話を用いていることが明らかになった。 また、当該校小学部児童の言語能力の内,研究第1年次に引き続き日本手話の実態把握を行った。Morgan(2006)による方法を実施し、小学部児童20名の「frog,where are you?」(Mayer,1969)の日本手話語りのビデオデータを収集し,トランスクリプトを作成し,研究第1年次のトランスクリプトとの比較を平均発話長及び言語複雑度としてのRSの使用回数という指標を用いて行った。その結果,平均発話長及びRSの使用回数ともに,いずれの児童においても有意に増加していた。なお,研究第1年次に認知能力の実態把握として行ったDN-CAS認知発達評価アセスメントについては,引き続きレーブン色彩マトリックス検査を小学部児童22名に実施し,cut-off pointとして1SDを設定して知的な遅れのある児童を除外した。その結果,DN-CASの標準得点の平均は,全検査で93.6を得ることができた。よって当該校の聴覚障害児は,ほぼ聴児と同等の認知発達を遂げていることが分かった。
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