2010 Fiscal Year Annual Research Report
過剰な攻撃行動の神経メカニズム:背側縫線核の抑制系代謝型受容体と攻撃行動の個体差
Project/Area Number |
22830130
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
高橋 阿貴 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助教 (30581764)
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Keywords | GABAB受容体 / 背側縫線体 / 過剰な攻撃行動 / セロトニン神経系 / マウス / 個体差 |
Research Abstract |
暴力行為(過剰な攻撃行動)による被害は後をたたず、毎年160万人もが命を奪われている。過剰な攻撃行動の生物学的基盤を理解するために、本研究ではマウスを用いて解析を行っている。過剰な攻撃行動の脳内メカニズムとしてセロトニン系が着目されているが、その調節機構についてはほとんど分かっていない。これまで研究代表者は、脳内セロトニン系の座である背側縫線核のGABAB受容体を薬理学的に活性化させることで、過剰な攻撃行動が発現されることを明らかにした。そこで本研究では、背側縫線核のGABAB受容体の発現が攻撃行動の個人差に関与するかを検討している。日本産野生由来系統MSMのオスは極めて高い攻撃性を示し、性成熟後のオス同士を同じケージに飼育していると、ときに他のオスを負傷させ殺してしまうことがある。一方で、実験用マウス系統であるC57BL/6Jではこのような行動が見られることは全くない。Real-time PCRを用いた解析から、背側縫線核の存在する中脳領域において、MSMはGABAB受容体mRNAの発現がB6よりも高いことが明らかとなった。今後、免疫組織学的解析により、GABAB受容体の発現が異なる領域について詳細に検討することで、攻撃行動の系統差とGABAB受容体の発現の関係について調べていく。また、背側縫線核におけるGABAB受容体の発現を調節するために、現在レンチウイルスを用いた過剰発現を試みているとともに、GABAB受容体のコンディショナルノックアウトを用いて部分的なGABAB受容体の欠損の効果も検討していく予定である。
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