2011 Fiscal Year Annual Research Report
インコの発声パタン変化の追跡による流行の形成・伝播プロセスの解明
Project/Area Number |
22830131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関 義正 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 民間等共同研究員 (50575123)
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Keywords | インコ / 模倣 / 発声行動 |
Research Abstract |
セキセイインコは発声パターンを模倣できる数少ない動物種の一種である。インコに個体ごとに異なる発声パターンがあるが、集団を形成すると、そのパターンは次第にその集団を特徴づけるものへと変化する。このことからインコ集団中の発声行動の研究はコミュニケーションにおける流行の形成や伝播過程の優れたモデルとなり得る。 本研究ではセキセイインコを防音箱の中で飼育し、24時間/日、2週間の全発声を記録し、発声行動を解析した。4羽の鳥をそれぞれマイクを取り付けた別々のケージに入れ、視認しつつ音声で相互にコミュニケーションがとれる距離に設置、発声を個体ごとに記録した。5群で実験を行った。 インコの発声には単発の「コール」と、多様な音声パターンを数秒から数十秒間連ねる「ワーブルソング」がある。コールにおいては、ある個体の発声に続いて他の個体が鳴く「鳴き交わし」が生じたが、特定個体に対する応答数は他個体に対する応答よりも有意に多かった。ワーブルソングについては、いずれかの個体が鳴き始めると、次々と他の個体が鳴くという行動の伝播を頻繁に観察した。これらは発声行動において、流行を先導する「優位個体」の存在を示唆する。 通常、セキセイインコのコールには安定なパターンがあり、それぞれの音の「サウンドスペクトログラム」を重ね合わせることで相互の類似性を定量的に比較できる。本研究でも発声パターンの継時変化の検討にこの手法を用いたが、全体として発声パターンが多様過ぎて、パターン分類が難しかった。これは実験上の特殊な環境が一因かもしれない。 本研究はインコの発声を数十万単位の音声ファイルとして記録する大規模なものとなり、インコを用いた発声行動の研究としてこれまでに例をみないものであった。発声行動を先導する優位個体の存在を確認する等の成果から、後天的な学習性行動の伝播機構を生物学的観点で解明するためのデータを得た。
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Research Products
(1 results)