2011 Fiscal Year Annual Research Report
高移動度酸化亜鉛二次元界面における強相関希薄電子系の金属絶縁体転移
Project/Area Number |
22840004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小塚 裕介 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (70580372)
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Keywords | 酸化物薄膜 / 金属絶縁体転移 / 強相関電子 |
Research Abstract |
従来、二次元以下の系はすべて絶縁体であることが理論・実験両面より証明されたと考えられていたが、1990年代中ごろに非常に清浄な半導体二次元界面が作られ、極低温でも金属的状態が観測された。現在でもその起源は明らかになってはおらず、盛んに研究が行われている。また、このような研究は主にSiの表面反転層とGaAs/(A1,Ga)As系に限られている。本研究では近年作製技術の向上により得られるようになった、ZnOヘテロ構造における高移動度電子の金属絶縁体転移を観測し、他の系と比較することを目的とした。 前年度までの研究成果は、ZnOヘテロ構造の高品質化により、移動度500,000cm^2/Vsのヘテロ構造を作製可能となり、量子ホール絶縁体と呼ばれる状態への転移を観測した。この転移はZnOの大きな有効質量に基づく強い電子間相互作用が効いていると考えられる。本年度はZnOヘテロ構造の高品質化を引き続き行うとともに、高移動度二次元電子系において、金属絶縁体以外に電子相関が強く表れる現象観測を行った。 結果として、本年度は次のような成果を得た。ZnOヘテロ構造品質の改善により移動度は800,000cm^2/Vsまで向上した。このヘテロ構造を用いて磁気抵抗振動を測定すると、高次の分数量子ホール効果が観測でき、その温度依存性から、複合フェルミオンの有効質量の解析を試みた。電子相関によって有効質量が増大すると期待されたが、その値は電子のものと大きく変化せず、一見相関の影響は見られなかった。しかし、電子が金属的な振る舞いを示すのに対し、複合フェルミオンは絶縁体的に振る舞い、その原因は複合フェルミオン間の強い電子間相互作用に基づいていることが明らかとなった。この結果は、従来自由粒子として捉えられる複合フェルミオン描像に新たな疑問を投げかける桃であり、今後精力的にその詳細を調べていく予定である。
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Research Products
(6 results)