2010 Fiscal Year Annual Research Report
メカノケミストリーを応用した断層内鉱物相転移反応に関する研究
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22840018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
亀田 純 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特任助教 (40568713)
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Keywords | 粘土鉱物 / メカノケミストリー / 付加体 / 地震 / 津波 |
Research Abstract |
本研究課題は、断層に特徴的にみられる鉱物(特に粘土鉱物)相転移反応の機構解明を主目的とする。今年度は、浅部化石付加体である房総-三浦付加体に発達する前縁断層(白子断層)を対象として、断層ガウジとその周辺堆積物中の粘土鉱物のXRD、TEM分析を行った。各種粘土鉱物の続成過程を見ると、いずれも断層ガウジにおいて局所的な反応の進行が認められた。なかでもスメクタイトーイライト混合層(I-S)のイライト化は明瞭である。XRDパターンの分析から、周囲の岩石に比べ断層内では約10%程度イライト量が増加していることが分かった。 断層内に局所的にみられるイライト化反応は、温度や化学的環境の異常、あるいは鉱物細粒化に伴う反応表面積の増加など様々な要因が考えられる。しかし、XRDパターンによる結晶粒径サイズの分析を行うと、断層物質は必ずしも細粒化していない。また、イライト化反応に限らず、緑泥石やイライトの結晶成長(あるいは積層不整の減少)や、カオリナイトの部分的な分解反応も進んでいることなどを考えると、局所的な熱異常が最も妥当な解釈である。ここでは、断層の摩擦発熱による熱履歴を仮定し、Pytte and Reynolds (1988)が提案している高次のイライト化反応速度式を用いて熱履歴の逆解析を試みた。その結果、複数回にわたる最高到達温度400℃程度の摩擦発熱により、イライト化反応をよく説明することができる。この結果は、最近Sakaguchi et al.(2011)らが発表した、南海トラフの前縁断層における熱履歴とも調和的である。これらのことから、地震性高速すべりは付加体先端まで到達するする可能性が高いこと、さらにこれらの高速すべりに伴い津波が発生したであろうことが予想される。また断層すべり時の熱履歴解析に、粘土鉱物の速度論が有用であると考えられる。
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Research Products
(5 results)