Research Abstract |
平成22年度は2つの課題に関して,それぞれの実績を以下に述べる. 課題1:様々な生成条件下で産した組成の異なるパンペリー石族鉱物に関する研究 本年度は生成条件の異なるイタリアCosta Sopramare産およびBargonasco stream産のパンペリー石-(Mg)と三重県鳥羽産のAlに富むパンペリー石の天然パンペリー石のX線単結晶・粉末構造解析を行い,組成変化に伴う結晶構造変化と水素結合に関して検討した.その結果,2価の陽イオンの種類と量が,結晶内分配係数に大きく影響することが明らかとなった.また水素結合システムは一種類だけではなく,複数のシステムが同時に存在することを確認した. 課題2:緑簾石族鉱物の6配位席におけるバナジウムの挙動と構造変化に与える影響 VとCrに富む緑簾石族鉱物の結晶構造解析,およびHRTEMやEBSDを使用した観察を行った.化学分析で決定される(V+Cr)の含有量と結晶構造解析結果から得られる(V+Cr)含有量に大きな相違があることが明らかとなった.さらに(V+Cr)含有量の高い部分は,隣接する低い部分と比較して,結晶度が著しく低いことが明らかとなった.通常,トリウムやウランなどの放射性元素に富む緑簾石族鉱物(例:褐簾石)でばメタミクト化による結晶の非晶質化が知られているが,本試料には放射性元素は全く含まれていない.これまでこのような現象は知られておらず,既知の知識だけでは問題解決は不可能である.本試料の結晶度の低下は,バナジウムやクロムなどの遷移元素の不混和領域や生成条件が関連している可能性がある.結晶度の低い結晶を加熱し,結晶構造解析したところ,結晶度はある程度改善され再結晶化がすすむが,通常の緑簾石の結晶度までは回復せず,また(V+Cr)含有量に変化は見られなかった.HRTEMをもちいた本試料の観察でも非晶質のVやCrが濃集した相は確認されず,化学組成と結晶構造解析結果で得られる遷移元素含有量の違いを説明することはできなかった.現在,共同研究者のArmbruster教授とともに生成条件や化学組成などを多角的に検討し,原因の究明にあたっている.
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