Research Abstract |
本年度,主に検討を行った2つの課題について成果を述べる. 課題1:(As,V)O_4四面体を持つMnに富む鉱物の系統的な研究 (As,V)04四面体における陽イオンの置換と構造変化の関係の一般則確立を目指し,これまでアルデンヌ石,ティラガロ石などを用いた検討を行い,その結果,(As,V)O_4四画体はその幾何学的配置から分類され,その分類ごとに陽イオン分布が与える構造変化への影響が異なることを解明した(Nagashima and Amibruster 2010).本年度は,天然のパレンツォーナ石,ベリチェリウス鉱などのガーネット構造を持つ砒酸塩・バナジン酸塩を対象とした.その結果,本鉱物群の四配位席の変化は,同様のカテゴリーに分類されるアルデンヌ石と類似した傾向を示し,分布する陽イオンのイオン半径効果を直接反映することが分かった.本研究に関しては,共同研究者であるAmibruster教授と論文を執筆中である. 課題2:緑簾石族鉱物の6配位席におけるバナジウムの挙動と構造変化に与える影響 昨年度は天然のCrとVに富む緑簾石族鉱物の研究を行い,原因不明の結晶度の著しい低下に関する研究をおこなった.CrもしくはVの挙動に起因する可能性があると考えられる.合成含Crクリノゾイサイト(緑簾石族鉱物)は,通常の酸化物混合物からは生成しないことが報告されており(Nagashima et al.2009),通常の緑簾石のように容易に生成しないことが知られている.一方,バナジウムの挙動に関してはこれまで検討されていない.したがって,含バナジウムクリノゾイサイトの合成を試みた.通常用いられる酸化物混合物の出発物質,およびゲル出発物質を用いた実験を行ったところクリノゾイサイトは生成しないことがわかった.今後,実験条件や出発物質などを再検討し,バナジウムの挙動に関する検討を継続する.
|