2011 Fiscal Year Annual Research Report
石筍中の流体包有物の水同位体比測定法開発―沖縄における気候変動の復元―
Project/Area Number |
22840035
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
植村 立 琉球大学, 理学部, 助教 (00580143)
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Keywords | 安定同位体 / 水同位体 / 石筍 / 流体包有物 / 沖縄 / 古気候 |
Research Abstract |
過去の気候・環境変動はアイスコアなどの様々な試料に保存されている。鍾乳洞内で生成する石筍は、人類の生活圏に近い陸域の環境変動を定量的に復元できる可能性が高い。本研究課題では、この石筍に含まれる過去の降水である流体包有物の同位体比に注目し、新たな測定手法の開発と洞内の同位体比基本観測を行った。1)昨年度から開発を始めた石筍の流体包有物を抽出するための破砕装置の制作と改良を行った。その結果、石筍試料から水を抽出し、その水素と酸素同位体比(2H/1Hと180/160)を同時に測定することに成功した。酸素同位体比は、沖縄の降水と自然変動の範囲内であり、流体包有物の酸素同位体比が過去の降水を反映していることを示唆している。一方、水素岡位体比(2H/1H)は、有意に低い値を示した。2)玉泉洞(沖縄本島南部)において、洞穴内の温度、湿度、滴下水及び洞内河川水の同位体比計測を実施した(月1回)。また、洞内水の起源として降水試料の採取を近傍の2地点で開始した。滴下水の同位体比は、小さいが有意な季節変動(0.8permil)を示しており、降水同位体比とくらべると10分の1程度の振幅であることを明らかにした。また、沖縄における降水同位体比が変動する原因を明らかにするため、同位体GCMを用いて夏と冬で大きく異なる水蒸気輸送過程と同位体比の関係を解析した。3)昨年度採取した沖縄本島および南大東島の石筍の炭酸カルシウム部分の同位体比分析および14C測定を実施した。14C測定、6個の石筍の生成年代は、おおよそ6千年から4万年前程度の期間に分散して成長していたことがわかった。同一層の同位体比測定(Hendy test)から、気候変動の復元に適した石筍試料であることを確認した。また、約9千年前付近の石筍の同位体比の測定結果は、夏季降水量の変動を示唆しているという予備的な結果を得た。
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