2011 Fiscal Year Annual Research Report
導電性三角格子磁性体の異常伝導とカイラリティの役割
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22840036
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高津 浩 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (60585602)
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Keywords | 三角格子 / 単結晶育成 / カイラリティ / 幾何学的フラストレート磁性 / 中性子散乱 / 低温X線散乱 / PdCrO2 / PdCoO2 |
Research Abstract |
(1)中性子弾性散乱実験:非従来型異常ホール効果が現れるT^*=20K前後の磁気構造について更に踏み込んで調べるために、フランスILLに赴き、ゼロ磁場中の中性子弾性散乱実験を行った。4軸回折計(D10)を用いて磁気散乱ピークQ=(1/3,1/3,L)[L=整数、反整数]の積分強度を測定し、2Kと30Kのデータに変化を見出した。特に、この変化は大きな波動ベクトルQを持つ磁気散乱に大きい事がわかり、また、磁気反射の位置には大きな変化がない事がわかった。このため磁気構造の変化は対称性が大きく変化するタイプではなく、スピンの幾何学的相互配置がわずかに変化するタイプであることが示唆される。磁気構造解析を行った結果、2つの可能性を得た。すなわち、(1)右巻き・左巻きの120度スピン面がc軸方向に交互に積層する平面型120度構造、(2)120度スピン面が有限の角度でc軸方向に交互に積層する非平面型120度構造の可能性である。これらの構造モデルは共に実験で得た積分強度を良く再現するが、カイラリティメカニズムを起源とするホール効果との整合性を考えた場合、後者(2)の磁気構造が確からしいと思われる。一方、磁気1ユニットセルのカイラリティの絶対量を見積もると30Kでの値の方が大きく、予想と反する結果を得た。これらのことは、T^*以下の異常なホール効果にはスピンカイラリティの寄与を実効的に大きくする効果(例えば、伝導電子の移動度)が大きく作用していることを示唆している。偏極中性子散乱の手法などを用いてスピン配列を正確に決定することや、磁場中の磁気構造を決定することが今後の展開の課題である。 (2)低温X線散乱実験:砕いた単結晶を用いて低温粉末X線散乱実験を行い、T^*近傍で(110),(009)ピークが大きく変化する事を見出した。これは酸素イオン位置等が変化した事を示唆する興味深い結果であるが、砕いた影響など測定条件の問題も考えられるため、今後単結晶を用いて直接調べることが必要である。
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Research Products
(3 results)