2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22840042
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
下元 数馬 明治大学, 研究・知財戦略機構, ポスト・ドクター (70588780)
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Keywords | フロベニウス写像 / 密着閉包 / F-特異点 / ホモロジカル予想 / 岩澤理論 / モジュラー形式 / p-進ヘッケ環 / ベルティニ型定理 |
Research Abstract |
当該研究では専門である可換環の手法を駆使して、特異点に関係する環論内部の問題と数論への応用、特に岩澤理論やモジュラー形式に関する重要な結果が得られた。最初に環論に関するものから具体的に述べる。代数多様体、特に正標数の体上で展開されるフロベウス写像を使った特異点の重要なクラスとして、F-純、F-入射、F-有理な可換環というものがある。これらは標数が零の特異点と密接な関係があり、詳しい解明が待たれている。当該研究者はこれらの特異点に関して、変形、半連続性、Grothendieckの局所化問題といった基本的な事について調べた。これらは自然な問題ではあるが、証明は今まで知られていなかった。F-有理な環はCohen-Macaulayであるが、F-純、F-入射な環は必ずしもそうとは言えない。従ってCohen-Macaulayという仮定を外した場合については、Hochster、渡辺敬一氏らが80年代に研究を開始してからは殆ど大きな前進は見られなかった。最初から一般的な設定を設けると困難が伴うので、出発点として局所コホモロジーが有限生成という条件を仮定する事で非自明な結果が得られた。この研究はまだ始まったばかりであり、Cohen-Macaulayという環論の研究者が馴染んだ世界から飛翔するための重要な一歩といえる。次に環論の研究で大きな困難が伴う混合標数を持つ環、つまり整数論でいう所のp-進整数環の研究についても幾つか重要な結果が得られた。任意の局所環は巨大Cohen-Macaulay環を持つか?というホモロジカル予想があるが、混合標数においては40年近く未解決である。数論幾何で使われるFontaine環を用いて、巨大Cohen-Macaulayに非常に近い環を構成する事に成功した。これは予想の解決まであと一歩という所まで迫ったものである。最後にベルティニ型定理について述べる。落合理氏(大阪大学)との共同研究で局所環に対するベルティニ型定理を実際に使える形で証明した。これも環が体を含まないので証明を書き下す事には困難が伴う。これを使ってモジュラー形式のp-進解析的な族に対する岩澤主予想を部分的に証明する事を現在試みている。この様な形で環論と数論が融合した研究がこれまで殆ど成されなかったが、そこで得られた手法はこれから多方面で活用される事が望まれる.
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