2010 Fiscal Year Annual Research Report
「金属量」依存性による、原始惑星系円盤の散逸メカニズムの観測的解明
Project/Area Number |
22840046
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
安井 千香子 国立天文台, ALMA推進室, 研究員 (00583626)
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Keywords | 星惑星形成 / 赤外線天文学 / 電波天文学 |
Research Abstract |
惑星の形成過程の解明は、地球科学・生命科学など、幅広い分野に大きく影響する、現代天文学最大のテーマの1つである。惑星は星の周囲を取り巻く原始惑星系円盤が散逸する中から生まれるため、円盤の散逸メカニズムの解明は、惑星の形成過程を明らかにする上で極めて重要である。われわれは、散逸にとくに関係すると考えられる「金属量」という有望なパラメータに着目した独自の観測研究をすすめている。本研究では、われわれが住む銀河系の幅広い領域に着目し幅広い金属量下の領域について、赤外線からサブミリ波までの広い波長域の包括的な観測をすすめ、原始惑星系円盤進化の金属量依存性を統計的に調べる。その結果、現存する様々な理論モデルに制約をつけ、まだ解明されていない円盤散逸メカニズムの最初の手掛かりを得ることを目標に掲げている。これまでに低金属量領域では円盤の寿命が太陽近傍に比べて極端に短いことを示唆してきたが、今年度は、惑星が生成されやすいと考えられる高金属量領域へ展開した。近赤外線(約1-2μm)の観測により、星生成領域中で太陽より2倍以上重い星について原始惑星系円盤内側部分の円盤の残存率を求め、散逸のタイムスケール導出の試みを行った。まず、近い将来、惑星形成・原始惑星系円盤の研究が銀河系さえを超えたより広範囲にまで発展することを見据え、感度が非常に高く比較的容易に観測が可能な近赤外線観測のみでも円盤を持つ星を検出する手法を確立した。この手法を用い、比較対象の太陽近傍において幅広い年齢範囲の星生成領域での円盤残存率を初めて統一的に導出し、散逸のタイムスケールを見積もった。更に、この手法を用いて高金属量領域について円盤残存率を導出したところ、太陽近傍ではほとんど全ての星が既に原始惑星系円盤を失っていると考えられている約2千万年の年齢の領域であっても約10%の星が未だに円盤を持っている可能性を示唆した。
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