2010 Fiscal Year Annual Research Report
冷却原子気体で実現する量子系のフェルミ・パスタ・ウラムの再帰現象
Project/Area Number |
22840051
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
段下 一平 独立行政法人理化学研究所, 柚木計算物性物理研究室, 基礎科学特別研究員 (90586950)
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Keywords | Fermi-Pasta-Ulamの再起現象 / Bose-Einstein凝縮 / 光格子 / Bose-Hubbard模型 / Time-evolving block decimation / 量子揺らぎ |
Research Abstract |
本研究では、(1)光格子中の一次元ボース気体の実験において、その優れた制御性を活かすことでFermi-Pasta-Ulam(FPU)の再帰現象が実現可能であることを提案すること、(2)FPU現象に対する量子揺らぎの影響を厳密な数値計算手法、time-evolving block decimation(TEBD)法、による解析から明らかにしFPU現象の研究の新たな方向性を開拓すること、の二点を主要な目的とした。 (1)の目的に関しては、最近実現されたリング状光格子中で、量子揺らぎが弱い古典極限(U/(nJ)→0,ここでUとJはそれぞれBose-Hubbard模型のオンサイト相互作用とホッピングエネルギーで、nは密度)において、FPUの再起現象が観測可能であることを離散的非線形シュレーディンガー方程式の数値シミュレーションから示した。一方、(2)の「量子揺らぎの影響」を調べるためには、密度が非常に大きい領域でTEBD法を適用する必要があった。我々はまず、Bose-Hubbard模型をTEBD法で解くさいに新たなカットオフを導入するにとで密度が非常に大きい領域でTEBD法が適用することに成功した。この改良されたTEBD法を用いて、FPU現象に対する量子揺らぎの影響を厳密に取り扱い、量子揺らぎによってFPUの特徴である再起的な振動が顕著に減衰することを明らかにした。しかしながら、期待されたのとは反対に、その減衰の結果として系は熱平衡状態に向かわずにある準安定状態に落ち着くということが示された。さらに、その準安定状態が、一般化されたGibbs emsembleとよく一致することがわかった。
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