2011 Fiscal Year Annual Research Report
高速低振動数ラマン分光による芳香族分子結晶融解ダイナミクスの動的研究
Project/Area Number |
22850003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡島 元 東京大学, 大学院・理学研究科, 助教 (20582654)
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Keywords | ラマン分光 / 格子振動 / 結晶構造 / 顕微ラマン分光 / 融解過程 / 結晶析出 / 磁性イオン液体 |
Research Abstract |
融解や、凝縮、溶解、結晶析出による結晶中の格子振動の生成と消滅を、結晶の形状と比べてより精密に調べるために、ラマンスペクトルと光学像とを同時に取得できるよう装置を改良した。700nmより長波長の光をフィルターで切り分け顕微鏡に取り付けたカメラで撮影することにより、ラマン散乱光(500~600nm)と光学像(750nm以上)とを同時に別の検出器で観測する。この方法によりおよそ150ミリ秒の時間分解能で形状の変化と格子振動の変化とを同時観察することが可能となり、相転移中の格子振動変化を調べる新規の手法を開発した。 この手法を用いて融解や溶解による結晶の消失のラマン・光学像同時観察を試みたが、消失寸前に試料が動いて測定点から外れてしまうという問題があったため、きちんとした観測をすることはできなかった。しかしながら、逆に結晶析出を、ブチルメチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(bmimFeCl_4)を溶媒として調べたところ興味深い結果が得られた。磁性イオン液体として知られるこの化合物に紫外光を照射することで、水を主として持つ結晶が析出するという報告は既にある。今回、532nmのレーザー光を照射し、その後生じる結晶の低振動数ラマンスペクトル変化を光学像とともに取得した。その結果、既報の結晶が37cm^<-1>と190cm^<-1>に格子振動バンドをもつこと、またそれらが水の振動に関わらない振動であることが分かった。さらに秒単位の測定により190cm^<-1>のバンドが徐々に高波数シフトすることと、それが結晶の成長に対応していることが分かった。シフトするバンドの帰属をつけることは今後の課題ではあるが、結晶の成長と格子振動数シフトとを関連づけることによって、光による結晶析出過程の解明に役立つことが期待される。
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